離婚と年金の問題
「離婚したら年金ってどうなるの?」
「夫の年金も貰えるの?」
年金の問題は熟年離婚でよく問題とされます。
しかし、年金について、あまりよく知らない方や誤解されている方も多いのではないでしょうか。
まず、年金には、公的年金と私的年金があります。
公的年金の中に、国民年金の制度と、厚生年金の制度があります。(平成27年9月以前には、共済年金の制度もありましたが、同年10月、厚生年金の制度に一元化されました。)
国民年金の制度において支給されるのが老齢基礎年金、厚生年金の制度において支給されるのが老齢厚生年金と呼ばれています。
老齢基礎年金は、誰でももらえるので、問題にはなりません。(もちろん、保険料を納めている等の条件は満たしている必要があります。)
問題になるのは、老齢厚生年金です。(共済年金も含みます。)
老齢厚生年金を受け取ることができるのは、被保険者のみです。
具体的には、夫がサラリーマンで働いていて妻が専業主婦の場合、老齢厚生年金を受け取ることができるのは、被保険者たる夫のみとなります。
そこで、離婚時年金分割制度が設けられました。
誤解されている方も多いのですが、これは、「年金」自体を分けるのではなく、「年金の納付実績(納付記録)」を分ける制度です。
1 3号分割
妻が専業主婦だった場合でも、きちんと請求をすれば、基本的には、夫の老齢厚生年金の保険料納付実績(納付記録)が自動的に2分の1に分割され、貰えることができるようになりました。
これは、「3号分割」と呼ばれています。
この3号分割において、分割の対象となる納付実績の期間は、あくまで、①婚姻期間中、かつ、②平成20年4月1日以後のもので、③第3号被保険者の期間のもの、に限られています。
3号分割は、第3号被保険者であれば、相手方の同意なく請求できますので、相手方と連絡を取りたくない、又は、取ることができない、という方にとっては、使い勝手が良い制度ではないでしょうか。
2 合意分割
分割割合について、話し合いによって決めるのが、「合意分割」と呼ばれています。
実情としては、分割割合は2分の1と決められることが多いです。
話し合いで合意が得られない場合には、家庭裁判所で分割割合を決めることができます。
合意分割は、婚姻期間中のものであれば、全ての納付実績が分割の対象期間となりますので、この点でメリットは大きいと思われます。
年金の問題はそれぞれの生活設計に大きな影響を与える問題なので、専門の弁護士に相談し、正しく理解しておくことをお勧めします。